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代表取締役所長 山本 耕平
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廃棄物処理施設の建設をめぐる問題では、合意形成の理念やあり方だけでなく、対立する主体間のコミュニケーションの方法や、市民参加の手法、合意形成の「場」の運営など、技術的な面での問題も少なくない。本稿では、住宅地の真ん中に計画されたびん・缶選別施設をめぐる合意形成プロセスをケーススタディとして、市民と行政の橋渡し役としてのコンサルタントの役割について考察した。 コンサルタントの役割として重要なことは、行政と市民の情報ギャップや技術的な知識のギャップを埋め、対等な立場で議論できるように支援すること、第三者として問題の構造と要因を客観的に分析し、検討のアプローチへの戦略を提示すること、市民の自治意識を引き出し公共的な観点から意見調整を図るコーディネーターとしての役割、様々な争点を実証的に検証できるような手法を提供すること等である。 |
| キーワード |
| コンサルタント コーディネーター 合意形成の手法 アドボケイト プランニング ローカルガバナンス |
近年、あらゆる行政分野で市民、事業者、行政のパートナーシップが唱えられるようになっている。行政学ではこれを「協働」と呼び、自治体において様々な主体が協働して問題解決に取り組んでいくローカル・ガバナンスが注目されている。ローカル・ガバナンスという言葉には、公共的な領域は行政だけが担うのではなく、企業や市民、NPOや市民活動グループなど、民間セクターも含めて、いろいろな活動体系が公共的な問題解決に役割を果たしていくべきだということを意味がこめられている。1)
廃棄物問題は自治体が処理体制を拡充するだけではとうてい対処することができなくなり、排出者責任、生産者責任を強化するとともに、地域では協働によるいろいろな施策や仕組みを構築していくことが不可欠になっている。すなわちガバナンスの仕組みをどう作るかが、自治体の廃棄物行政の重要な課題のひとつであることは間違いない。
実際、廃棄物分野では早くから官民の協働によるシステムが生み出されてきた。沼津市を嚆矢とする高度な資源分別収集は、現場の収集職員と住民の協働によって発案され、今日の日本のリサイクルシステムに多大な影響を与えた。その後、地域によって○○方式と呼ばれる、地域個性をふまえた分別収集システムやリサイクルの体系が各地で誕生した。
あるいは、牛乳パックのリサイクルも一例である。元来「禁己品」とされてきたものを大月市の主婦が回収を始めたことをきっかけとして、行政、消費者団体、福祉団体、スーパー、古紙業者などの協働によって回収システムが開発され、資源として認知されるようになったものである。2)
これ以上例をあげるまでもなく、廃棄物分野では公民協働による取り組みがいろいろな形で行われており、循環型の社会システムへの転換をめざそうという点では行政、市民の意見は合致している。3)
一方で、行政と市民が対立する問題も少なくない。ごみ処理の有料化、分別の細分化など、市民の間でも意見が対立する問題もある。
特に廃棄物処理施設の建設をめぐっては、依然として対立の構図からなかなか抜け出すことができない。川下の受け皿として最終的な廃棄物処理の責任を負わされている自治体にとって施設整備は喫緊の課題であるが、住民にとっては廃棄物処理施設を「嫌悪施設」とみなす感情的な問題や地域のイメージ低下の懸念、ダイオキシンや地下水汚染など、環境面や安全性に対して拭いがたい不安があり、候補地周辺住民からは必ずといって反対がある。
こうした事態に対して、行政側は施設の安全性を強調し、住民還元施設という形で利益供与することで反対運動に対処しようとしてきた。しかしガバナンスという観点から考えた場合、施設整備の必要性や立地について、一方的に行政だけにその決定の責を負わせるべきではない。候補地周辺住民の懸念するリスクは、市民全体で負担すべきであり、その意味では利害当事者である候補地周辺住民と行政に加えて、便益の受益者である多数の市民も含めた合意形成を図らなければならない。
筆者はコンサルタントという立場から、廃棄物行政におけるいくつかの合意形成の現場に関わってきたが、合意形成の理念やあり方だけでなく、対立する主体間のコミュニケーションの方法や、市民参加の手法、合意形成の「場」の運営など、技術的な面での問題も少なくないと感じている。
コンサルタントの役割はいくつかあると思うが、合意形成の場においては、こうしたソフト面の技術をサポートする役割も軽視できない。本稿では、これまでの経験をふまえて、合意形成過程におけるコンサルタントの役割を論じてみたい。

ケーススタディとして、東京都狛江市における空き缶・空きびんの選別施設建設をめぐる事例をとりあげたい。狛江市は、人口約73,000人、面積6.4km2、世田谷区に隣接する小さな住宅都市である。91年に市が資源選別施設の建設を計画し、用地取得したが、市民の反対でいったん計画を白紙に戻し、あらためて市民参加の下で検討を行い、施設建設に至ったという事例である。4)
ごみ処理施設としては規模も小さく、焼却施設や最終処分場と比べれば環境影響や地域イメージといった問題もけた違いに小さいが、問題になる要因が少ないだけにモデルケースとして検証しやすいだろう。
狛江市は、ごみの中間処理、最終処分ともに市外の事務組合の施設に依存しており、市内にごみ処理の関連施設はなかった。89年から民間業者委託でびん・缶の分別収集を始めたが、業者が市内に設けたストックヤードの環境対策が十分でなく、トラブルが起きていた。そのため、委託業者は多摩地域のM町の工業団地内に選別施設を建設し、そこで処理を行うこととなった。
一方、M町では産廃処理施設をめぐる問題を契機として、町外からのごみ搬入について強い批判がおき、91年5月には「資源」であるはずのびん・缶の搬入も拒否されるという事態が生じた。町からの申し入れを受けて狛江市では、急きょ市内にびん・缶の選別施設を建設することを決め、用地取得と施設の設計を急いだ。
市が取得した土地は約2000m2で、当時は農地(梅林)であったが、都市計画上は準工地域に指定されていた。しかし、周辺は住宅地で、保育園、マンション、戸建住宅に隣接しており、ごみ関連施設の建設場所としては最悪の立地条件であるといってよい。
反対に立ち上がったのは、近隣の住民と保育園の父母たちであった。資源化施設の建設が突然持ち上がり、唐突に用地が決定されたことに加えて、市がごみ問題についての基本方針や長期計画を持たず、場当たり的な対応をしているという事に対する憤りの声が大きかった。
結果的に議会で予算可決した用地案は凍結され、ごみ処理の基本計画を策定するなかでリサイクルセンターの建設の是非も検討するということになり、91年12月に「狛江市一般廃棄物処理基本計画策定委員会」(こまえごみ市民委員会、寄本勝美会長)が発足した。
用地選定までの合意形成は、ごみ市民委員会を舞台として進められた。
ごみ市民委員会は市民12名と学識経験者6名で構成、行政は事務局に徹して市民委員会の活動をサポートするという体制で発足した。市民委員は反対運動の中核を担ってきた保育園の父母代表や地元住民らのほか、消費者団体、自治会、商工界などの代表で構成された。
市民委員会の会議はすべて公開、議事録も常備して閲覧できるようにした。委員会の活動状況はごみ市民委員会ニュースで定期的に広報した。こうした運営の方法そのものはごく一般的なものであったが、後述するようにこの委員会のイニシアチブで市民へのPR活動や調査活動を行い、このことが建設予定地周辺の問題から市民全体の問題へと論点を広げていくことにつながった。
また、この委員会の開催回数も特筆すべきことのひとつである。会議は全体委員会のもとに、ワーキングのための部会を設けた。市民委員が主体となった「策定作業専門部会」(市民部会)では、ごみ減量計画の検討、ごみの組成調査、家庭でのごみの排出実態調査、他都市の実例調査、広報活動、ニュースレターの編集などを行い、「学識経験者委員会」(専門家部会)では用地選定にかかる評価項目の検討作業等を行った。それぞれの部会と全体委員会の開催回数はあわせて1年間に約50回を数え、学習会やニュースレターの編集会議などを含めると70回を越えた。
この問題の争点は、悪臭や騒音などが懸念されるびん・缶の選別施設の立地場所として、当初の予定地が適切であるかどうかという点と、確固たる方針も持たないままごみ処理をすべて市外の施設と民間に依存し、ごみ処理基本計画もないまま拙速に施設建設を進めるというようなやり方でよいのかどうかという点である。
つまり、ごみ問題にどう取り組んでいくのか、ごみ処理をどう進めていくのかという計画策定が先行すべきであり、施設の建設は計画にもとづいて行われるべきであるというのが、反対の理由のひとつであった。
反対運動の中心となった市民は、これまでの市のごみ処理行政の経緯を調べ、特に無計画で場当たり的な行政が問題であることを指摘してきた。市もその指摘を甘んじて認め、ごみ市民委員会では資源化施設の建設の必要性も含めて、ごみ処理基本計画の検討を行うこととし、用地問題は当面棚上げされる形で出発したのである。
ここで筆者の立場と役割を明確にしておきたい。基本的にはごみ市民委員会の事務局として、議事録や資料の作成のほか、必要な調査を行うことが役割であったが、同時に市と市民の双方に対して、第三者としての立場から様々な形で助言や意見具申を行い、委員会のコーディネート役である委員長を補佐してきた。
また、実質的に市民部会の活動のコーディネートを行い、市民と行政の橋渡し役、調整役としての役割を果たしてきた。
ごみ処理基本計画を短期間で策定することは難しいため、最初のステップとして共通の理念と資源化施設を建設すべきか否か(必要でないとした場合には代替案も含めて)を検討するこことした。
そこで最初の論点となったのは「自区内処理原則」をどう考えるかということであった。市内に施設を建設することの必要性について相当の時間をかけて議論を重ね、市民アンケート調査などを行いながら、総論としてはごみ処理をすべて他地域に依存するのではなく、せめて資源化施設だけは市内に建設すべきであるという結論に達した。
約8ヶ月かけて「総論」として施設建設が合意され、用地選定の手続きに入った。当初予定地以外に、建設可能な土地(公園やグランド、市役所駐車場など。一部民地も含む)を洗い出した。
用地選定は専門家部会が面積や用地取得の難易性等を考慮して評価し、その結果を全体委員会で審議するという形をとった。専門家部会では各候補地についての一次評価に対して各委員が意見を述べ、繰り返し評価するという、いわゆるデルファイ法によって選定し、最終的に@市役所駐車場、A当初予定地の二カ所を候補地とする中間答申がまとめられた。
なお当然のことながら、用地選定の審議の過程では多数の市民が傍聴するなかで、様々な議論が戦わされたことはいうまでもない。
中間答申以後は、候補地二カ所の周辺住民代表5名を加えた拡大委員会を設置して検討を進めた。候補地周辺住民からは再び反対の声も上がったが、公開の場で市民主導で審議してきた意義は大きかった。隣接するマンションや戸建住宅の住民も委員に加わることを了承し、行政対住民という対立の構図から市民同士の対話という形で次のステップに進むことになった。
2候補地のそれぞれについて、施設整備プランを検討した。市役所駐車場は面積が数分の一しかなく、ピロティ式建物の下の空間であることから、資源化施設としてはきわめて変則的なものにならざるを得ないが、いろいろ制約はあるものの不可能ではないという結論を出した。この場合は周辺への影響は少ないが、作業環境や効率はきわめて悪いことが予想された。
当初予定地については市の当初案ではなく、設備をできるだけ縮小し、建物のボリュームを抑えることや、住宅地に違和感のないデザインのイメージを提示した。この作業は建築家の協力を仰いだ。
これらのプランの作成は、われわれコンサルタント側が独自に行い、委員会に示したものである。
同時に、2候補地のそれぞれについて、簡単な環境影響評価を行うこととした。環境影響で問題となるのは騒音、振動、臭気、交通問題で、市民部会では各地の施設を調査して、どの程度の問題が発生する可能性があるか、またどういう対策が考えられるかをまとめた。さらに、委員自ら騒音を測定するなど、懸念される生活環境への影響を防止するための方策を詳しく検討した。ここでも各分野の専門家の助言を得た。
その結果、住民が懸念する問題は現在の技術レベルで十分対応可能であることが確認され、残された問題は、労働環境や施設が立地することのイメージであるということになってきた。
以上のような手順を経て、委員会発足からちょうど1年後に用地決定のための会議が開催された。一人一人の委員が最終意見を述べ、最終的には専門家委員の判断に委ねられたものの、事実上は全員の合意として当初予定地が選択されたのである。
この決定には様々な条件が付けられた。施設への負荷をできるだけ小さくするために排出源での分別方式を見直すこと、具体的な建物の設計についてはあらためて市民参加の場で検討することとした。
同時に「環境保全型のための循環型都市をめざす」、「ごみ半減都市の実現をめざす」、「自区域内処理の原則をふまえて、市民が自らの排出するごみに対して責任を持つ」の3つの理念を掲げた一般廃棄物処理基本計画(ごみ半減計画)をとりまとめた。「ごみとして処理する量を2002年までに50%減量する(ごみ半減)」ことを計画目標として設定し、計画の推進にあたっては「ごみ半減推進市民委員会」を設置し、具体的な事業計画についても市民参加によって推進していくことも盛り込まれた。
その後M町との関係上、建設市民委員会を組織して具体的な検討に入り、96年10月に完成した。
問題が惹起してから1年間という、きわめて短期間で合意形成に成功した理由は、当該施設がごみ処理施設としては規模の小さいものだったためという指摘があるかもしれない。しかし施設規模の小ささは、時間の短さの理由にはなるかもしれないが、それだけでは合意形成がうまく運んだという理由にはならない。現場に関わった立場からは、やはりアプローチの手順と合意形成の手法が成功の大きな理由であると考えている。
以下、コンサルタントとしての視点から、いくつかのポイントを指摘したい。

ごみ処理計画や施策の検討から施設建設の是非を問い直していこうというのは、市民側から提案されたことでもある。ごみ市民委員会の中心となった市民は、他都市の取り組み状況などを自らの足で丹念に調べ上げ、「私たちは、決してビン缶中間処理工場の建設に反対しているのではありません。私たちの大切な税金で建てられるのですから、もっと長期的な視野に立って、長い使用に耐える、きちんとしたものにしてほしいのです」(「ビン缶中間処理工場に関する資料」保育園父母会が中心となってまとめた資料)と述べている。
市は市民のこのような良識に信頼を置き、計画段階にさかのぼって検討することとした。はじめに施設ありきではなく、市民とともに計画、政策を検討していくという姿勢で臨んだことが重要なポイントである。
もうひとつは、この問題を反対する市民と行政だけの問題とせず、市民全部に関わる問題として取り上げていくことである。施設建設に否定的な結論がでた場合、その代替案の検討までがごみ市民委員会に課せられた役割であり、また結論に対する責任は市民全体が負うという考え方に立って進めるべきであるというのが、コンサルタントとして進言したことである。つまり行政と市民は対立する立場ではなく、ごみ問題に協働して挑んでいくことが不可欠であるということである。
ただしそのためには、行政と市民の不信感を解消し、信頼関係を構築していくことが何より重要である。
そのために、ごみの組成調査や家庭ごみの実態調査などを市の職員と協働して行い、一緒に汗を流すことで相互理解を深めることを意図した。本格的な議論に入る前のこうした活動は、後の委員会運営に大きく役立った。
合意形成を図るためには、参加する主体が情報や知識を共有し、同じ土俵で議論ができるようにしなければならない。われわれはそのために、委員会の発足当初にごみ問題の一般的な知識を得るための学習会の開催や、近隣の自治体への見学会の開催などのプログラムを用意し、委員が情報や知識を共有することに数ヶ月の時間を費やした。
また、行政側の情報は常に開示するとともに、新しい情報は常に委員会全体で共有できるようにした。
委員の顔ぶれも重要なポイントである。学識経験者として寄本勝美早大教授(会長)、原科幸彦東工大教授ら、市民参加、合意形成に高い見識を持つメンバーが選ばれていたことに加えて、市民委員にそれぞれ高い能力を有する様々な専門家がいたことをあげておく必要があろう。
同時に、各委員が委員会を合意形成の場として互いに尊重し、積極的に参画していくという姿勢が貫かれたこともあげておく必要があろう。
また当初の反対運動に関わった市民委員には大手出版社の編集者やジャーナリストもおり、きわめて高い調査能力と表現力があった。ニュースレターの編集、執筆はすべてこうした市民の手で行われた。
一般市民に対するPR活動や市民参加についてもいろいろなアイデア、手法が駆使された。
特にユニークな活動として、駅前で1か月間、毎日3人〜5人の市民がごみについてショートスピーチをするという「こまえごみ100人スピーチ」がある。「ごみ友達の輪」を広げようという趣旨で市民が発案したものだが、市長の第一声からはじまってコンサルタントの我々も演台に立ち、結果として135人もの市民が演台に立った。
アンケート調査、シンポジウム、公開ヒアリングなどを含めて、様々な形で委員会の活動を市民にアピールするとともに、一般市民の意見聴取と参加の機会を設けた。
一般市民に対するPR活動や市民参加についてもいろいろなアイデア、手法が駆使された。
争点を検証するために、できるだけ実地に、委員会のメンバーが作業に参加できるような形で調査を行った。
最初に、組成調査を実施した。実際にごみを分けて調べる作業を通して、ごみの現状を実感することができる。統計的に精度の高い調査とはいえないが、現状を認識し問題を共有する手段としてはきわめて効果が高い方法である。
資源化施設にはどのような環境問題が起こる可能性があるのかを調べるために、他都市の施設で騒音を測定したり、ヒアリング調査を行った。
最終的な候補地の検討段階では、模型を使って建設される建物の大きさと隣接する住宅やマンションとの大きさ、距離、高さなどを検証するなど、それぞれの段階で専門家の協力を得ながら、問題や解決策が目や耳で確認できるような工夫をしてきた。
ちなみに、適切な専門家を選ぶことはわれわれの仕事である。幸い、優秀な専門家が協力してくれたことが、委員の理解を深めることに大いに貢献した。
このような経験をふまえて、合意形成過程におけるコンサルタントの役割を考察してみたい。
市民が行政と対等に渡り合って、行政の計画を覆すことはなかなか困難である。その大きな理由の一つは、いろいろなことを判断していく上での判断材料となる情報はほとんど行政が持っていることである。
「よらしむべし、知らしむべからず」というのは、封建時代のお上が民衆を統治する要諦であったが、その伝統はわが国の政治や行政の風土として存在している。ガバナンスという観点からは、意志決定に関わる主体が情報を共有することは、最も基本とされるべき事柄であるが、未だに十分とはいえない。
こうした行政側の情報提供が不十分であることに加えて、一方ではすさまじい情報が洪水のごとくあふれている。そのような中で、十分な基礎知識のない市民は、必要な情報を整理して理解することはなかなか困難である。
コンサルタントの役割の一つは、こうした情報の整理と合意形成の場への提供であろう。行政側が情報提供しても、専門的であったりすぐに理解できないデータであったりした場合は、それを咀嚼してわかりやすく市民に提供する必要がある。また様々な情報を判断材料として活用できるように整理する作業も必要である。
狛江市のケースでは、委員会が発足してから3か月程度は、市民部会を中心にもっぱら学習会や他都市の見学会などに時間を費やした。市のごみ問題の状況は他都市との比較の上でどういうポジションにあるのか、何が問題なのか、法律はどのようになっているのか、類似の事例ではどのようなことが行われているのか等、市の担当者も含めた学習会をとおして情報の共有につとめた。
この時間をどう評価するかで、市とわれわれとの間に意見の相違があったが、大局的、客観的に市の状況を判断し、議論を重ねられるようにするためには、まず委員が情報と状況の認識を共有することが重要であることを主張した。後の議論がスムーズに進んだのは、はじめのアプローチが間違っていなかったことを証明している。
行政は多数の専門家を活用できる立場にあるのに対して、市民側にはそうした専門的、技術的な知識が不足していることが多い。すなわち専門知識という点で、行政と市民の力の差があまりに大きすぎるということが問題である。コンサルタントの役割の一つは、こうした技術面のギャップを埋めることである。
アメリカでは、行政の案に対して、専門家が市民側に立って代替案を作り、良案をすりあわせて計画を修正していくという、いわゆるアドボケイト・プランニングという方法がいろいろな計画領域で行われている。合意形成の場に立つコンサルタントは、こうしたアドボケイターとしての役割を果たすことが必要である。
狛江市の例では、当初の行政の作成した施設設計案に対して、われわれ自身の専門的知見と専門外については各分野の専門家を活用して、市民側に立ったプランを提示した(たとえば、臭気対策、騒音対策、建築設計について専門家を招聘して助言してもらった)。最終的には、用地決定の前提として、新たなプランをもとにすることで合意された。
対立した局面では、各主体ともに問題の構造や要因を客観的にみることができない。対立の要因は何なのか、コンフリクションを解消するためには何をどう解きほぐしていけばよいのか、そのためにはどのようなことからアプローチしていけばよいのか等、全体の構造を俯瞰した上で、合意形成に至る道筋すなわち戦略を示していく第三者が必要となる。
その役割は学識経験者委員に求められるが、実際の現場では複雑な状況をすべて把握して、捌き役をすべて学識経験者に依存することは限界がある。そこでコンサルタントが市民と行政それぞれから詳細な事情を聞き取り、相互の意見の相違や問題の焦点を整理することになる。
その意味では、合意形成の場におけるコンサルタントは、行政とも市民とも一定の距離を置いた第三者の立場に立って、相互の橋渡し役を果たすことが求められる。アドボケイターとして市民側に立つことと矛盾するが、このことは市民側に立って行政と対立する立場に立つという意味ではないので、第三者としての立場とアドボケイターとしての立場は矛盾しないと考える。
ただし、このような微妙な立場で市民からも行政からも信頼を得るというのは、もっぱらコンサルタントの経験によるものであり、足場の置き方はなかなか難しい。
迷惑施設をめぐる紛争の場合、イメージダウンに伴う地価の下落や補償といった金銭的な利害調整が行われることもある。コンサルタントの役割は、こうした金銭的な利害調整にあるわけではない。
そもそも廃棄物処理施設は地域の環境保全を目的として計画されるものであり、最終的な合意は、市民の自治意識や公共意識の上になされるべきである。したがってコンサルタントの役割は、市民の自治意識を引き出し、あるいは高めることを通して、調整を図っていくことである。また市民に対してだけでなく、行政などの事業主体に対しても、私的な利害に問題を矮小化せずに公共的観点から合意形成に向けた努力を促していく必要がある。
換言すれば、ガバナンスという観点からの調整者、コーディネーターである。そのためにはコンサルタントには、公共意識と高い倫理性が求められるだろう。
あるプランを実際に導入した場合にどのような影響があるか、その予測に対する評価の違いが合意形成のネックになる場合がある。あるいはデータで示されても実感できないために、それがどの程度の影響があるのかわからないことから、賛同を得られないということもある。
こうした場合に、いろいろな手段で問題を明らかにしたり、あるいは問題がないということを証明したりすることもコンサルタントの役割である。
一般的には類似の事例を集めたり、現場調査をして、予測されている事柄をできるだけ理解できるように説明する。データをわかりやすく表現したり、専門家を招いて疑問に答えてもらったりすることもある。
前述したように狛江市の例では、騒音測定や交通量調査を市民が実際に行うことで、問題の可能性や対策について実感にもとづいた議論ができた。周囲のマンションや住宅と比較できるように、簡単な模型を作成したことによって、当該施設の大きさや高さを実感できるように工夫した。このように、机上では理解しにくい問題をいろいろな手法を用いてわかりやすく伝えるというテクニックが、コンサルタントには求められるのである。
以上、合意形成のプロセスにおいて、コンサルタントに期待される役割について述べてきたが、蛇足ながらコンサルタント側の事情や課題についてもふれておきたい。
合意形成の現場にコンサルタントが関わる機会は多いと思われるが、果たしてすべてのコンサルタントが先にあげたような能力や技術を身につけているかどうかが問題である。
コンサルタントには環境系、まちづくり系、土木系などと称されるように様々な専門領域があり、設計や物作りに直接関わるハード系から調査や計画立案などのソフト系まで、その範囲はきわめて広い。コンサルタントという肩書きと合意形成の専門家は一致しないことのほうが多いのである。
また一般にコンサルタントとして求められる種々の技術や知識は、仕事を重ねる中で体得し、自分自身の中で体系化していかなければならないが、特に合意形成の場において求められる技能は、経験の積み重ねがものをいう世界である。
合意形成の場においてコンサルタントは重要な役割を担うものと考えているが、今後は経験的な知識や手法を体系化し、プロのコーディネーターとしての専門家を育成していくことが課題である。
合意形成の場において、コンサルタントはソフトな技術を売っていることになるわけだが、そのことに対する社会的評価はさほど高くないように思える。同時に、こうした仕事に対する対価も決して多くはない。
たいていの場合、コンサルタントは行政からの委託料で仕事をする。一定の作業量を想定していても、予定を上回ることのほうが多いが、それを補填してもらえることは少ないのが実情である。狛江市の例では、一年間の会議の回数は70回を超えた、他の自治体のケースでは80回以上ということもあった。
調査のようにある程度マンパワーが予想できるものは比較的適切な算定ができるが、合意形成の現場では当初の予定通りのマンパワーで仕事が進むことは少ない。しかもコーディネートというような、成果物が目に見えない仕事については、ほとんど対価が支払われないケースすらある。
廃棄物処理施設のように、建設費がきわめて高額にのぼる割に、事前の様々な調査を含めてソフトな部分にかける費用はきわめて少ない。合意形成をスムーズに図っていくためには、事業費の一定割合を合意形成のための費用とすることをルール化するなど、財政的に十分な措置を講じていくことが望まれる。そうすることで、優秀な人材が参入し、コンサルタントの能力向上にもつながっていくことと思われる。
| The role of the consultant about consensus-building process |
|---|
| Concerning the problems over the construction of the waste disposal and
treatment facilities, there are not only the ideology of the consensus-building
or what it should be, but also quite a number of technical problems such
as communication between the opposing parties, techniques of citizen participation,
and management of "the place" of theconsensus-building. In this
paper, a case study was analyzed, which is about the consensus-building
process concerning bottle and can selection facilities planned to be constructed
in a residential area. Moreover, the role of the consultant as a mediator
between citizens and administration was examined. Referring to the analysis, some of the important roles of the consultant are: 1) to bridge the gap of information and technical knowledge between citizens and administration, and ensure the both parties are able to discuss on an equal footing, 2) to act as a third party, analyzing the structures and factors of the problem objectively and suggest a strategy to the approach of the examination, 3) to elicit self-governing consciousness of the citizens and adjust the opinions in terms of public interests, and 4) to provide the techniques by which various issues can be verified empirically. |
| Key words |
| consultant / coordinator / the technique of consensus-building / Advocate planning / local governance |
―廃棄物学会誌第13巻第3号(2002)掲載原稿より―
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