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これまでの取り組み

ニュースレター Vol.2

特別寄稿都市の美化に求められる視点

米村 洋一 (多摩大学総合研究所 客員主任研究員)

 一口に「美化」といっても、さまざまなテーマがあります。 人間に対して使う「美しさ」を意味する形容から考えた場合、都市における美化の課題は以下のように整理できるのではないでしょうか。
 人間の場合、まずプロポーションの善し悪しが「美しさ」の基準になっていますが、都市の場合でいうと都市構造がきちんとしているとか、産業構造のバランスがとれている、といったことでしょう。
 輝くような健康美といった言い方もありますが、それは地域のエコロジー(生態系)のバランスがとれているとか、コミュニティがしっかりしていて治安がいいとか、あるいは廃棄物処理・下水処理がうまく機能している都市のことではないでしょうか。
 それから元気のよさも、広義での「美しさ」ということができます。都市に当てはめれば、活気があるといったことで、とくに地方都市に行けば地域の活性化は大問題です。
 また、美容・身だしなみなど人間の外面を飾る行為は、都市でいうと緑化や修景事業、看板規制、さらにパブリックアートとして彫刻を置くといったまちづくりを指すでしょう。
 そして、入浴や洗顔といった、人間が清潔を保つというレベルの話が、都市管理にとっての散乱ごみ対策であると位置づけることができます。言い換えれば、都市管理のために最低限行われるべき施策が散乱ごみ対策なのですが、行政内部の政策優先順位はあまり高くないようです。
 しかし、立派な公園を造れば公園管理をきちんとする必要。

人間に対する「美しさ」の形容 対応する都市美化の課題
プロポーション 都市構造
産業構造
健 康 美 エコロジー
コミュニティ(治安)
廃棄物処理・下水処理
元 気 にぎわい・活気
美容・身だしなみ 緑化・修景
パブリックアート
看板規制
清潔(入浴・洗顔) 乱ごみ対策

があるのと同じように、いい都市を造ろうとすれば美化対策を中心にメンテナンス活動を行政で予算化する必要があるのは当然のことです。 都市の美化に関する研究課題としては、次の3点があると考えられます。 1つ目は、行政内部における連携体制の構築です。都市の全体的な管理は、行政の縦割りで行われるやり方を変えて、清掃部門だけではなく、企画部門をはじめ、その他様々なセクションが共同作戦で取り組むことが必要です。

2つ目は、自治体同士の広域連携による取り組みの推進です。
美化の啓発や実践活動では、複数の自治体による広域的な取り組みが必要な場合があります。
例えば河川の美化は、流域単位で広域的に取り組んだ方が、美化のしくみづくりや活動の一層の展開が望め、今までになかったような制度ができるかもしれません。また、広域的な取り組みには、マスコミの注目や住民の関心が高まりやすいというアピール効果があります。
なお、これまでの行政では、啓発や環境教育は、わからない市民を教育して行政に協力させていこうという考え方が一般的だったかと思いますが、今後は、NGO(非政府組織)・NPO(非営利組織)など、市民の主体的な取り組みを行政が応援していくという発想が必要です。現代は情報が非常に行き渡っていますから、熱心な市民の方が行政より勉強して、活動基盤を持っている場合も少なくありません。
なお、これまでの行政では、啓発や環境教育は、わからない市民を教育して行政に協力させていこうという考え方が一般的だったかと思いますが、今後は、NGO(非政府組織)・NPO(非営利組織)など、市民の主体的な取り組みを行政が応援していくという発想が必要です。
現代は情報が非常に行き渡っていますから、熱心な市民の方が行政より勉強して、活動基盤を持っている場合も少なくありません。

3つ目に、美化に関する技術開発です。
一例を挙げれば、デジタルカメラの活用でしょう。いずれGPS付きのデジタルカメラも出てくるでしょうが、そうなると映像情報に加えて撮影場所・撮影の方角などが自動的に記録されます。そのカメラで散乱の様子を撮影すると、データがコンピュータにインプットでき、散乱の分析などに役立つでしょう。
このように、いいツールを利用すれば、効果のあがる活動は随分あるかと思うのです。
最後に、今から26〜27年ほど前に、長野県の霧ケ峰で行った「カンコロジー」と呼ばれた散乱調査のお話をします。この調査には、建築家、行動心理学や生態学の専門家など様々な分野の方が関わったのですけれども、調査を進めるうちに生態学で行われる植物調査や動物の行動調査などの調査手法が、散乱状況の調査に応用できることがわかりました。
また、くずかごの場所を示すために「標識つきくずかご」を設置したところ回収率も格段に上がりました。つまり、標識にはポイ捨て防止行為を誘発するためのサインとしての効果もあったわけです。このことは、心理学の立場からすれば当たり前の話です。
各種の専門的なノウハウを取りいれると、具体的に効果のある新しいシステムを開発することができるという一例です。
このように、今後の都市における美化対策では、様々な自治体・セクション・専門家の方々などが議論と交流を重ねて技術や知識を集積し、新たな美化の手法をソフト・ハードの両面で開発することが、非常に重要なのではないでしょうか。